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  ハッカは古くから“美徳”の象徴とされてきましたが、これは、爽やかな味と香りに加えて、 ハッカには消毒・殺菌効果があり、葉を噛むと『歯が白くなり口臭を防ぐ』ことがヨーロッパ 大陸でよく知られていたため。  現代の歯磨き、ガムや口腔清涼剤、焼肉レストランでくれるキャンディーなども、ハッカの この効能を利用したものです。

 14世紀頃、イギリスの十字軍の兵士たちは、ヨーロッパの宿でハッカの歯磨きを知り、 故国にその習慣を持ち帰ったと言われています。騎士道華やかなりしころ、貴婦人たちとの 恋には、にっこり笑った時にこぼれるまっ白な歯と爽やかな息が、きっと欠かせなかったの でしょうね。




 ギリシャ神話によれば、ハッカの学名であるミンタ(Mentha)はニンフ(妖精)で、 地獄の河の神コキュトスの娘でした。ミンタは
ある時、地獄の王ハデスに見初められ、その愛を受けますが、その時すでにハデスには、 ペルセフォネという妻がいたからさあ大変。 夫の浮気を知ったペルセフォネは、怒り狂ってミンタを捕らえ、足で踏みつけました。 女神の足の下でミンタの姿は1本の草に変えられてしまいました。

・・・・これがハッカです。





 中近東はハッカの原産地のひとつ。スパイスの本場であるこの地方で、 ハッカはミントティとして飲まれたり、肉用スパイスとして使
われていましたが、交易につれてヨーロッパへ運ばれて人気の高いハーブとなり、シルクロードを経由して伝わった中国では、主 に生薬として用いられました。風邪によく効くので多く栽培されたようです。 絹や陶磁器を運んで旅だったラクダたちは、山のようなハッカを背に帰路についたのかもしれませんね。





 シルクロード、中国を経てハッカが日本に伝えられたのは一千年以上前。 奈良時代の古文書、正倉院文書の天平宝字6年(762年)の記述に『目草(めぐさ)』 という名で登場します。984年に丹波康頼が著した漢方書『神遺方』にも洗眼剤として記 されているように、日本では主に目薬として使われ、親しまれていたらしく、ハッカのことを 『めぐさ』または『めくさ』、あるいは『めぐすり』などと呼ぶ方言が各地に残っています。



 新約聖書のマタイ伝とルカ伝に、ユダヤ教徒であるパリサイ人をイエスが非難するシーンが描かれています。 『禍害なるかな、パリサイ人よ、汝らは薄荷・芸香(うんこう)その他あらゆる野菜の十分の一を納めて、 公平と神に対する愛とを等閑(なおざり)にす。』つまり、十分の一税を納めているだけで、 真の信仰心を忘れている、といったわけです。あらゆる野菜の代表選手として言及されるほど、 ハッカはポピュラーな作物だったのですね。



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